肝臓の疾患

肝臓移植はどんな人に必要なのか

病院で肝移植

肝臓病が進行し、薬物治療だけでは命が危険にさらされることになると最終手段として肝臓移植が行われることがあります。

どんな人が、どのようになると肝臓移植をしなければならないのでしょうか。

肝臓移植の対象疾患

小児と成人で、疾患の内容は大幅に異なりますが、成人では主に肝臓がんと肝硬変が半数を占めます。

肝臓がんは大きさやがん細胞の塊の数によって移植の対象になりますが、症状が進んでいる場合は、移植を行っても転移の確率があがってしまうので、保険医療の対象から外れるケースがあります。

肝硬変はウィルス性肝やアルコール性肝硬変などがあり、アルコール性の場合は6か月の禁酒の後、移植可能となります。次いで胆汁が詰まって出なくなってしまう肝内胆汁うっ滞症があります。

原発性硬化性胆管炎という20代の若者に起きやすい原因不明の胆管の炎症や、小児で移植原因No,1の胆道閉鎖症などが含まれます。その他には、肝臓で代謝に必要な酵素がうまく作り出せなくなる代謝異常症の場合にも移植を行います。

C型肝炎が移植の原因に…

注目すべきは大半を占めている肝臓がんと肝硬変です。これらの原因はC型肝炎が最も多く、大変残念なことに約半数の方が移植後、C型肝炎を再発してしまいます。

C型肝炎は慢性化し、15年から20年をかけてその3~4割が肝硬変に移行します。一度肝硬変になってしまった肝細胞が元に戻ることはありません。

更に恐ろしいのは、肝硬変に移行した方の6~8割が肝臓がんに移行することです。この場合、肝臓移植は肝がんだけでなく、肝硬変をおこしている肝臓そのものを摘出するため、両方を一度に根治することができます。

但し、全ての肝がんが移植対象というわけではなく、転移の可能性の低い3センチまでのがんが3か所以内、もしくは5センチまでのがん1か所、までが移植の対象で、これをミラノ基準と呼んでいます。

移植の現実

海外では脳死や死亡直後のドナーからの肝移植が主流であるのに対し、日本ではなかなか臓器提供が進まない現実があります。結果として国内では生体肝移植という、家族等の近親者にドナーになってもらい肝臓の一部を提供してもらう方法が大半を占めています。

移植にはそれぞれの疾患ごとに条件がありますが、要するに移植を行って生命の危機を根本的に回避できるかどうか、が条件クリアの主旨になります。がんで言うなら転移の可能性が低く、移植によって根治可能かどうか、ということになります。

また、移植後も生涯、免疫抑制剤という薬を服用しづつける必要があり、免疫抑制剤服用時には感染症への配慮も欠かせません。

肝臓の病気が悪化したら、移植をすればよい、というほど簡単なことではなく、また移植をしたら薬も治療もいらなくなる、というわけでもありません。一番なのは、移植をせずに済むように、C型肝炎等は、早めに治療をして肝硬変に移行させないことだと言えます。

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