肝硬変になると、肝細胞の中にたくさんの血栓ができ、血流が悪くなります。
血液は行き場がなくなってしまうので、胃の静脈を通って、食道の周りや食道粘膜の下の静脈へと逆流してきます。この過程で、食道粘膜の下の血管が拡張してできるこぶのようなものが、食道静脈瘤です。
食道静脈瘤ができても、とくに自覚症状はありません。
病院でも上部消化管内視鏡やX栓検査、CT、MRIなどでしか診断できません。
ですので、人間ドッグや他の疾患での検査などで、たまたま見つかることがほとんどのようです。
しかし、食道は食べたものが、必ず通っていく場所です。
薄い粘膜を隔てたところに静脈瘤があるわけですから、当然血管が破れてしまうこともあります。
食道静脈瘤が破裂すると大量出血の可能性があり、大量の吐血、さらに出血性ショックから死につながる危険があります。
特に肝硬変の場合は、出血が止まりにくいので、注意が必要です。
昔はこのような出血で、約四割の人がなくなっていたようですが、現在ではこのような大量出血は、頻繁には起こりません。
それよりも、少量の出血を繰り返し、肝性脳症になることが少なくないようです。
グロビンというたんぱく質は、腸のなかでアンモニアを発生させます。
そのアンモニアが脳に届くと、肝性脳症を引き起こしてしまうのです。
食道静脈瘤の治療は、静脈瘤からの出血を止める対症療法と、静脈瘤自体をなくす根治療法の二種類に分けられます。
対症療法には、食道静脈瘤硬化療法(EIS)というものがあります。
これは、内視鏡で静脈瘤に針を刺して、静脈瘤からの出血を固める硬化剤を注入するものです。
九割以上の確率で止血ができることから、多く行われている治療です。
また出血が多く、緊急を要する場合などには、食道バルーンボナーデという治療が行われます。
これは、バルーンによって出血部分を圧迫して、止血するというものです。
長い時間そのままにしておくと、圧迫されている部分が壊死してしまうため、一時的な処置として行われます。
根治療法では、食道静脈瘤結札紮術(EVL)というものがあります。
内視鏡の先端で静脈瘤を吸引し、輪ゴムのようなリングで縛るというものです。
一見難しそうですが、意外と簡単な手術なので、よく行われています。 肝硬変の患者の約七割は、食道静脈瘤があるそうです。
食道静脈瘤は一度完治しても、肝臓の状態が悪いと、またできてしまう可能性があります。
肝臓の健康が、全身の健康へと繋がっているともいえるのです。