800~1500gほどもあると言われる肝臓は、私たち人間の体の中で、もっとも大きな臓器です。この肝臓が、がんに侵されてしまう病気を「肝がん」と言いますが、肝臓から発生したがんだけでなく、ほかの臓器から転移したものも含めて肝がんと言われることもあります。
今回は、肝がんの基礎知識をご紹介しましょう。
世界のがんの死因第3位
肝がんは、大きくふたつに分けることができます。
- 原発性肝がん
- 転移性肝がん
原発性肝がんは、肝臓から発生したがんで、ほかの臓器から肝臓に転移したものを転移性肝がんと言います。
2008年の1年間で、全世界のおよそ70万人が原発性肝がんが原因で死亡しています。これは、肺がん、胃がんに次ぐ第3位で、C型肝炎やB型肝炎が流行しているアジアやアフリカなどの地域で特に多いことが特徴です。
C型肝炎と肝がん
肝がんのおよそ8割は、C型肝炎ウイルスが原因です。
非感染者と比べると、C型肝炎ウイルス感染者の肝がん発症率は、およそ1,000倍だと言われています。C型肝炎ウイルスに感染すると、慢性肝炎、肝硬変と進行して、個人差はありますが、およそ30年で肝がんに至るケースが多いことが特徴です。
ほかにも、B型肝炎ウイルスやアルコール、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が原因となることもあり、肝硬変を経ずに、突然肝がんを発症することもあります。
肝がんを早期発見するために
ほかのがんと同じように、肝がんも早期発見、早期治療が重要です。しかし「沈黙の臓器」「忍耐の臓器」と表現されることもある肝臓は、これと言った自覚症状がほとんどないために、多くは発見が遅れてしまいます。
肝がんになりやすい慢性肝炎や肝硬変を患っている人は、早期に肝がんを発見するために、血液検査や腫瘍マーカー測定、超音波検査など、必要な検査を定期的に受けておくと安心ですね。また、女性の肝がん発症率のおよそ3倍と言われる男性は、特に注意が必要です。
肝がんの治療
がんの治療は、一般的に外科手術や放射線療法、抗がん剤療法などの化学療法がメインです。しかし、肝硬変を併発している肝がんの場合には、抗がん剤の効きが悪く、放射線療法の効果もそれほど高いものではないため、多くは外科手術を選択しています。
肝臓は、8割ほどを切除してもおよそ4ヵ月で元の大きさまでに再生し、肝機能も元に戻ると言われています。早期に肝がんを発見することができれば、大きく切除して再生を狙う治療もできますが、肝硬変が進んでいると、肝臓の再生能力も低下しているため、肝不全を引き起こしてしまうことがあります。
肝硬変と肝がんの進行具合を正しく見極めて治療する必要があるため、肝がんの治療は判断が難しいと言われているのです。
では、肝がんの切除が困難な場合には、ほかにどのような治療法を選択できるのでしょうか?
- 局所療法
- 肝動脈塞栓療法
局所療法には、経皮的ラジオは焼灼療法、エタノール注入療法、マイクロ波凝固療法などがあります。これらは、肝臓に穿刺針を挿入し、そこから熱や薬品を注入してがん細胞やその周辺を壊死させる治療法です。
日本では、日本肝臓学会が定めている「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」に基づいた治療を行うことが原則とされています。