みなさんは、肝臓の疾患の原因がウイルスだけだと思っていませんか?実は、さまざまな感染症が原因となり肝臓疾患を引き起こすことがあるのです。
今回は、感染症が原因となる肝臓の病気をご紹介しましょう。
目次
一度感染しても安心できない風疹
子どもの感染症として知られる「風疹」。三日ばしかと呼ばれることもあり、幼いころに感染したという方も多いのではないでしょうか。
風疹の感染経路は、くしゃみや咳などによる飛沫感染です。潜伏期間がおよそ3週間と長いため、感染に気づかずにウイルスを広めてしまうこともあります。
風疹は一度感染すると、再び感染することはないと言われてきましたが、近年再感染した例もあるため、成人してからも感染してしまう危険性があります。
成人後の風疹ウイルス感染に注意
成人後の感染のおよそ8割は肝障害を発症してしまいます。妊娠中の感染では、胎児も風疹ウイルスに感染して、小児肝硬変の原因となってしまうこともあるので、注意が必要です。
また、妊娠前期の感染では、胎児の奇形や障害の可能性が高くなるので、出産を諦めるという辛い選択をせずにすむように、注意しましょう。
抗体を持っているかの確認を
かつては義務づけられていた予防接種も、さまざまな理由により平成6年に任意の接種に変わっているため、平成6年以降に生まれた人の中には風疹の予防接種を受けていない人もいます。
また、予防接種の時期が法律の変わり目と重なる1979年から1987年に生まれた人の中にも予防接種を受けていない人が多くいると言われています。女性はもちろん、この年代に当てはまる方は特に、風疹の抗体を持っているかどうか検査をしておくと安心ですね。
放っておくと命にかかわることもある肝膿瘍
マラリアや梅毒、結核、ワイル病(黄疸出血性レプトスピラ症)、日本住血吸虫症、肝吸虫症(肝ジトマス)、包虫症(肝エキノコックス症)など、さまざまな感染症が原因となり、肝障害が起こることがあります。
中でも特に肝臓への負担が大きいのが「肝膿瘍」と呼ばれる、肝臓に膿が溜まった袋が形成される病気です。肝膿瘍を引き起こす原因は、細菌性とアメーバ性のふたつに分けることができます。
細菌性(化膿性)肝膿瘍
胆石などにより腸管が閉塞すると、胆管の中で胆汁がうっ滞することがあります。そこへ腸内細菌が感染することで胆管炎が引き起こされ、肝臓内に膿瘍(膿が溜まる袋)が形成されると考えられています。また、稀に虫垂炎やクローン病、潰瘍性大腸炎などによる炎症が肝臓にまで広がることが原因となることもあります。
特に、20代以下の発症が多い虫垂炎は、初期症状が分かりにくい、似たような症状を引き起こす疾患が多い、診断が難しいなどの理由から病状が悪化して、肝膿瘍や腹膜炎を発症することが多いので注意が必要です。
アメーバ性肝膿瘍
赤痢アメーバの腸管内感染が原因となり、肝臓内に膿瘍が形成されると考えられています。海外渡航者に多く見られますが、近年では同性愛嗜好者に発生する例も報告されています。
肝膿瘍の症状
肝膿瘍を発症するとどのような症状が出てくるのでしょうか?
- 発熱
- 全身倦怠感
- 大量の汗が出る
- 右上腹部痛(触ると腫れが分かることも)
- 黄疸 など
アメーバ性肝膿瘍の場合は、上記に加えてトマトジュースのような血性の下痢が見られることもあります。
肝膿瘍の検査と治療法
肝膿瘍の場合、血液検査をすると、白血球の増加やCRPの上昇などが見られます。超音波検査やCT、MRなどの精密検査を経て、診断が確定されます。
肝膿瘍の治療は、細い管を肝臓に通し、そこから膿を外に出す方法が用いられますが、病状が進んでいる場合には、開腹手術をすることもあります。
特に、細菌性肝膿瘍の場合は、放っておくと敗血症や細菌性ショックなど命にかかわる重大な疾患を引き起こすことがあるので、早期発見早期治療が大切です。ここにご紹介した症状に当てはまるものがあったら、早めに消化器内科を受診しましょう。