脂肪肝が進行すると、肝臓に炎症が起こることがあります。
肝細胞が破壊されて機能しなくなったり、脂肪化がさらに進行したりなどする状態で、これを脂肪性肝炎といいます。
その中でも、肥満や糖尿病が原因の非アルコール性脂肪肝の一部は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へと進行します。
また、薬が原因の薬物性肝障害が、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)へ進行する場合もあります。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は1980年にアメリカで発見された、比較的新しい病気です。
アメリカが肥満大国と呼ばれることからもわかるように、アメリカの成人の一割弱は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)といわれています。
日本でも1990年代後半から認識されるようになり、近年では生活習慣の変化から、患者の数は増加してきています。
しかし、実は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の詳しいメカニズムは、まだわかっていません。
脂肪肝に加えて、肝臓への酸化ストレスなどが原因という考えが、現在では一般的です。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)には、自覚症状がありません。
また、画像検査や血液検査だけでは脂肪肝か非アルコール性脂肪肝炎(NASH)かの判別が難しいとされています。
ですので診断は、皮膚から肝臓へと針をさして肝臓の一部を採取する、肝生検を行う必要があります。
診断では、発生する症状が同じ、アルコール性脂肪肝炎との判別も重要となります。
アルコール摂取量が一日20g以下、というのが基準になります。
これは、缶ビールだと一本、日本酒は一合に値する量です。
問診によって、普段のアルコール量を診断の材料にすることが多くあります。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療は、脂肪肝と同じく、まずは生活習慣の見直しから始めます。
低カロリーで栄養バランスの良い食事や適度な運動、十分な睡眠が重要です。
これらを心がけ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)のもともとの原因、肥満や糖尿病を改善することが先決です。
生活習慣を改善しても治らない場合は、薬による治療が行われることもあります。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を放置すると、肝臓に炎症や線維化が起こりやすく、肝硬変に繋がります。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が肝硬変になる確率は、通常の脂肪肝の約十倍といわれています。
新しい病気なので、まだわからないことも多いのですが、肝がんへ進行したという症例もいくつかあるようです。
これから他にも、合併症などが見つかっていくかもしれません。
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と診断されたら、生活習慣を改善するのはもちろん、定期的に肝機能の検査を受けることもお勧めします。