日本国内では事故等で死亡したドナーからの移植はなかなか根付かない現状にあります。慢性的な臓器不足における、打開策の1つとして、生体肝移植があります。
概ね患者の近親者が提供者になるわけですが、ドナーになるとは、一体どういうことなのでしょうか。
どんな人がドナーとなり得るのか
生体肝移植のドナーは通常、6親等以内の血族、3親等以内の姻族で、年齢が65歳までの方が対象です。65歳を超えても、場合によってはドナーになることができますが、より綿密な検査が必要になります。
原則として投薬などを必要とせず、健康な方で、輸血できる血液型が望ましいのですが、輸血できない組み合わせでも、患者側に処置を施すことで移植は可能です。
移植する肝臓の大きさが充分に確保できることも条件の一つになります。健康な人であれば、肝臓の65%を提供しても、術後徐々に元の大きさに近づき、最終的には85~95%程度まで回復し、肝機能も正常になります。
ドナーになれない場合とは
一見健康で、本人が自覚していなくても、検査をしてみたら脂肪肝で不適合だった、というケースは良くあることです。
近親者を病から救おうとして、自分が脂肪肝を改善すべき患者になってしまうとう残念な結果にならないためにも、日常の健康診断はきちんと受けておきたいものです。
さまざまな理由や状況から、ドナー候補者にドナーになる意志がない、あるいは積極的ではないこともあります。移植のドナーは原則として自発的な意志が必要となるため、十分なインフォームドコンセントが必要です。
臓器提供について利益供与や金品授受の疑いがないことも重要です。成人同士の生体肝移植では、提供する臓器の量も多く、概ね60%程度を切り取らなくてはなりません。身体的な苦痛や、その後の生活を考えて慎重に判断されるべきです。
ドナーになるとどうなる?
ドナー候補としてさまざまな検査を受けます。外来で行われる採血等の簡単な検査の後、1泊2日程度の検査入院もします。ここまでの間に精神科の受診をすることが近年多くなっています。
それらをクリアし、提供の意思も明確になれば、手術に向けて準備をします。術前の4~5日前に入院し、術後は順調であれば、2週間程度で自宅療養に入ります。4週間程度で簡単な仕事に戻れるくらい回復する場合もあります。
その後は2、3か月に1度検査のために通院し、1年後からは経過観察となります。術後の傷はかなり大きなものとなります。傷みも術後2週間くらいまでは相当なものと覚悟しなければなりません。ドナー自身も肝臓がん摘出手術と同等の負荷がかかると考えても差し支えない程です。
また、術後も精神科の受診を勧められます。強い意志を持って手術に臨んでも手術という非日常的な体験から本人も予想しない気持ちの落ち込みや不安が現れることもあります。それに対して早期に適切に対処するために、肝臓移植を行う病院では精神科の受診を手順に含めることが多くなっています。
肝臓移植となると、真っ先に命の危険にさらされている患者本人に周囲の気遣いが集中しますが、ドナーも患者同様に身体的苦痛や不安を感じています。ドナーに対するケアや支えも重要です。