肝硬変とは、種々の原因からの炎症(慢性肝炎)により肝細胞の壊死と再生が繰り返され、肝細胞が減少し、そこに抜けた空間を埋める支持組織である線維が増えて硬くなるために、文字通り肝臓が硬くなった状態のことをいいます。
健全な肝細胞も線維に囲まれることにより、血液から十分な酸素と栄養素の供給を受けられなくなり、機能が低下し、肝臓全体の血液が流れにくくなり、血液の循環障害をおこします。
肝硬変の症状は?
症状は様々ありますが、肝臓は予備能力の高い臓器といわれており、肝硬変になってかなり肝細胞が壊れても、残った肝細胞がカバーしており、症状のみられない代償性肝硬変の時期が長くみられ、自覚症状もないか、あっても気づかないくらい軽微です。
しかし、肝臓の予備能力にも限度があって、肝硬変が進行していくと、全身倦怠感、脱力感、尿の色が濃く染まる、腹部膨満感、吐き気、嘔吐、腹痛など、消化器症状を主とする症状が現われ、肝機能が次第に低下し、非代償性肝硬変となります。
また、肝障害特有の黄疸、腹水(ふくすい)、肝性脳症、出血傾向(皮下出血、鼻出血、歯肉出血など)、浮腫、男性の女性化乳房なども見られます。
どうして肝硬変になるの?
原因としては、ウイルス性、アルコール性、自己免疫性、うっ血性、感染症など多岐にわたります。
この中ではウイルス性肝炎から起こる肝硬変が多くなっています。とくにC型肝炎から起こる肝硬変が全体の約6~7割を占め、B型肝炎から起こる肝硬変は約1割となっています。
その他、アルコール性肝障害から起こる肝硬変が約1割を占めています。
肝硬変の予防と治療法は?
従来、一度肝硬変になると、元にはもどらないといわれてきましたが、医療の発達に伴い、肝硬変といえども、原因が排除されるか、コントロールされれば、肝臓に備わっている治癒力がはたらき始めることが期待されています。
しかし、現時点では根本的な治療はむずかしく、肝性脳症、食道静脈瘤、腹水、肝がんなどの合併症に対する治療が主体になります。
予防としてはまず、ウイルス性肝炎から進展することが多いので、ウイルス性肝炎にかからないことが予防の第一歩です。
肝硬変に進展するB型肝炎とC型肝炎は両方とも、血液、体液を介して感染するので、このウイルスに感染している人の血液や体液に触れないことが必要です。それ以外の一般的な日常生活の接触で感染することは、まずありません。
また、アルコールを毎日多量に摂取していると、アルコール性肝障害による肝硬変が発症する可能性が高まります。
飲酒は適量に留め、アルコールを飲まない休肝日を設けることを心がけてください。既にアルコール性肝硬変になっている人は、禁酒が必要です。
その他、運動について、以前は安静にすることの重要視がされてきましたが、現在は、運動で筋肉を維持することもたいせつと考えられるようになっています。
代償期であれば、軽いウォーキングなどのむりのない運動が勧められます。心地よい疲労感が得られる程度の運動がよいでしょう。