肝臓の重要な働きの一つに、人間にとって有害とされる物質を分解し、身体に無害な物質に変える働き、解毒があります。
胃や腸で食べ物を消化する際、栄養素などの必要な物質以外に、アルコールや食品添加物などの、身体に有害とされる物質も吸収されてしまいます。
それらを肝臓で無毒化し、汗や尿として体外に排泄させるのです。
では、肝臓の解毒の中でも特に有名なアルコールで説明します。
お酒を飲むと、その中に含まれるアルコールが胃や小腸で吸収されます。
アルコールはそのまま肝臓に届き、そこでアルコール脱水素酵素(ADH)が加わり、毒性の強いアセトアルデヒドに分解されます。
そこにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)が加わると、毒性の少ない酢酸に分解され、身体の中でエネルギーとして利用されます。
エネルギーとして利用された酢酸は水と二酸化炭素になるため、汗や尿、息で身体の外に排出されるのです。
アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)は517個のアミノ酸から構成されるたんぱく質で、このうち487番目のアミノ酸の塩基配列は三種類あります。
これによってアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の代謝能力がきまります。
この代謝能力を超える量のお酒を飲むと、アセトアルデヒドから酢酸に分解しきれなくなり、アセトアルデヒドが蓄積し、悪酔いや二日酔いなどにつながります。
アルコールから分解されたアセトアルデヒドはDNAやたんぱく質と結びつき、癌を発症させる性質があることは有名です。
肝臓では、このように体外から入ってきたものだけでなく、体内で発生した物質も解毒します。
有害なアンモニアもこの中の一つです。
たんぱく質などに含まれている窒素化合物は、分解されると有害なアンモニアになってしまいます。
これを肝臓で、無害な水溶性の尿素に変えることができます。
それらを蓄えておくことはできないので、ほとんどは尿と一緒に排泄されます。
成人は、一日で30グラムもの尿素を排泄するとされています。
他にも、肝臓の代謝によって全身に送られたエネルギー源がエネルギーとして使われた燃えカスのようなもの、いわゆる老廃物は、肝臓に戻ってきて胆汁へ排泄されます。
老廃物の中でもまだ使えるものものがあり、それは小腸で吸収され、肝臓で再び代謝されエネルギー源として使われます。
人間が生きていくうえで、体外からの有害な物質を避けることは難しく、また体内では代謝と共に、常に有害な物質がつくられています。
それでも健康に生きていくには、肝臓が正常に解毒の働きをしてくれることが重要なのです。